Fahrenheit -華氏-
いつものお姉さんっぽい服装も好きだけど―――こういうカチッとした服装……
俺はもっと好きかも。
て言うか似合ってる。
ってか、何かエロい!!
「だ、抱いてください」
俺の言葉に柏木さんは冷た~い視線。
「死んでください」
やべ!柏木さんの背後のブリザードが今日は一段と激しいぜ。
「き、今日は珍しくスーツなんだね。誰が来たのかって思った」
「打合せがある日でしょう?いつもと同じ格好だと、先方に失礼かと思いまして」
かっちりしたエルメスのケリーバッグを置きながら、柏木さんが椅子に腰掛ける。
ベージュのバッグに、ブラウンに白とカーキ色の絵柄が入ったスカーフをさりげなく結んである辺り、やっぱりセンスがいい。
というか…
俺はいつもの綺麗系の柏木さんも好き。
いつもの服装でも全然失礼に当たらないのに。
まぁこうゆう仕事熱心なところとか結構…いや、かなり好きなんだけどね。
「おいしそうですね。何を召し上がってるんですか?」
柏木さんはちらりと俺の方も見る。
「ん?鮭ときのこの炊き込みご飯。柏木さんも食う?って、朝飯食ってきてるか…」
俺はラップに包んだもう一つのおにぎりを柏木さんに見せた。
「いえ、食べてません。朝食は食べないんです」
「あ、俺もそう。だけど昨日一晩中起きてたからかなぁ、腹減っちゃって」
俺は恥ずかしさを紛らわす為にいししと笑った。
隣から柏木さんの腕が伸びてきた。
何だろう、と思ってみていると俺の差し出したおにぎりを彼女は手に取った。
「………いただきます」