【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
いつもと同じルートでやって来たのは、原田さんが経営するライブハウス、“リコール”。
暁くんたちのバンド“Rain”の溜まり場でもある場所だった。
あたしと暁くんは慣れた様子で中へと入る。
「おかえり、柚姫ちゃん。」
そんなあたしたちを、優しい声で迎えてくれたのはオーナーの原田さん。
よく手入れがされたあごひげが特徴の、30歳くらいの優しそうなおじさんだ。
でもおじさんというには、少し若い。
「いやぁ、相変わらずこまめだねぇ。」
「どういう意味です?」
そんなとき、暁くんに挑発するような視線を向けた原田さん。
暁くんは、ちょっとムッとした顔で原田さんを見据えた。
「いやいや、オジサンの戯れ言だよ。気にしなさんな。」
くっくっく、と小さく笑いをこぼしながら磨いたコップを下にと置いた。