【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「悪いねぇ、お嬢さん。開店は夕方6時からなんですよ。」
オーナーらしく原田さんが女の子に近寄ってそう言えば、女の子はきょとんと小首を傾げた。
仕草の一つ一つまでがすごく可愛らしい。
あたしがぼんやりと見つめる中、その子は鈴を転がすような可憐な声で言った。
「アキラ…どこデスカ?ワタシ、アキラここにいるいわれた。」
え?
アキラ?
その子は、片言の日本語ながらも確かにアキラと言った。
ここにいるアキラという人物を、あたしは一人しか知らない。
「…沙夜(サヨ)!?」
暁くんは椅子から立ち上がり、スタスタとすごい勢いでその子に駆け寄った。
暁くんたちがいた場所からはそこは死角になっているらしく、愁生さんたちも興味深そうにゆっくりと近づく。