たった一人…。
コーヒーを買いに行くと彼の話し声がしてきた。
「柿田の階級をそろそろあげたいんだ。試験を受けさせようと思うんだけど、どう思う?」
「柿田かぁ。ちょっと早い気もするが、まぁ急ぐ気持ちも分からなくはないがな。」
「やっぱり早いかぁ。でも、俺が居なくなった後の事を考えると柿田には肩書きがある方が良いんだけどな。あいつにはここに居てもらわんといけんから。」
えっ…。居なくなるって、どういう事?
そんな事、何も言ってなかったのに…。
「居なくなるって本当?」
彼と話してるのは所長の松田さんだった。
松田さんは彼の肩をポンポンと叩き、
「まぁ、ちゃんと話すんだな。」
とその場を去っていった。
気まずそうな顔をした彼が私を見つめる。
「タイミングが良いんだか、悪いんだか。」
彼はそのままコーヒーを2つ買い、2階にあがるように私を誘導した。