たった一人…。
事務所に入るとすぐに私は彼を問い詰めた。
「居なくなるってどういう事?何も言ってなかったじゃない!このまま終わりになっちゃうの?離れて行っちゃうの?」
「おい、待て。おい。」
「だって!さっき松田さんと話してた!」
「だから!」
彼は私を強く抱きしめ、私の唇を塞いだ。
「お願いだから、そんなに興奮しないでくれよ。もう少し時期をみて話す予定だったんだが、今からちゃんと話すから。だから、お願いだよ。」
喫煙室に移動し、向かい合わせに座る。
同じコーヒー、同じタバコ。
私の香りは彼の香り。
「まず、ああいう状況で知る事になって申し訳ない。俺が居なくなるのは本当の事だ。俺から志願したんだ。でもな、それはお前の事を守って行く為なんだ…。」
どうして志願なんか…。
離れる事が私を守る為って…。
意味分かんない。
溢れる涙を必死に拭う私を見て、彼が抱きしめてきた。
「俺の今の立場じゃ、おまえを守る権限が持てないんだ。おれは報告をするだけで、何に関しても答えは上が出す。だから、俺はおまえを守る為に上の肩書きをもらう為に研修に出るんだ。ずっとじゃない、半年だけだから。それに、研修が終わったらここに戻れる事が決まってるから。だから、今は…。頼む。」