孤高の天使
自分は怪我をしていると言うのに嬉しそうに笑うラファエル。
さっきまで異様な空気だった部屋は、いつものように穏やかな時間が流れている。
ただ一点、異様なままなのはラファエルの胸から流れる赤い血。
「ラファエル様、傷の手当てをしましょう?」
未だ流れ続ける血を止血しなければと思い、ベッドから立ち上がろうとすれば…
パシッ……――――――
それはラファエルの手によって遮られた。
そして、彼は言う。
「イヴ、散歩に行かないか?」
「あの…ラファエル様?私の言ったこと聞いてました?」
ニッコリと笑って投げかけられた言葉に呆然としながら聞き返せば「あぁ聞いていたよ」とまた笑顔。
何故それで散歩なのだろうか…
「けど傷の心配をしてくれているなら尚更だ」
そう言ってラファエルがゆっくりと立ち上がる。
そして、私の目の前に手を差し出す。
「おいで」
ふわりと笑うラファエルにその手を取ろうか少し戸惑う。
しかし、散歩に行くことが傷の手当てをすることとどう関わりがあるかが気になって手を伸ばした。