孤高の天使
ゴウゴウと耳のすぐ近くで聞こえる空を裂く音。
大きく響くその音は身をすくませる。
一体どこまで高く飛ぶのだろう…
想像しただけで体が強張り、ラファエルにしがみつく腕が強くなる。
長い飛行に気が遠くなりそうになった時、速度が落ちてラファエルがピタリと止まった。
そして、ラファエルは私の耳元でそっと囁く。
「イヴ、目を開けてご覧」
しかし――――――
「む…むり……」
目を開けた先に広がる景色を想像しただけで体が強張る。
口からは素直な言葉が零れた。
だって私は……
「イヴ?」
ピタリとくっつき一向に黒衣を握る手を解かないでいると、ラファエルが訝しげに私の名を呼ぶ。
それもそうだろう…今まで警戒に警戒を重ねてきた私からラファエルに抱きついているのだから。
胸に顔を埋めたまま首を横に振って拒否を示せば、いよいよおかしい私の行動にラファエルはますます訝しがる。