孤高の天使



「本当にどうしたんだ?」


私の顔を覗こうとラファエルが体をずらし、離れた体と体の間にヒュッと外気が入り込む。

ラファエルの腕にだけ支えられた状態と分かった瞬間、完全に引き離されそうな距離をまた詰めた。



ギュッ……―――――



「いやっ……離さないで…お願い…」


黒衣を掴む手がカタカタと震え、小さな声で懇願する。




「高いところ…怖いの」


胸に顔を埋めながら告げたその言葉はくぐもっていて。

けれど、何も言わないラファエルに、声が届いたであろうことは目を開けなくても分かった。

きっと驚いてかける言葉もないのだろう。

黙ったラファエルに羞恥を感じながらもありのままを話し始める。




「天使なのにって思うでしょう?だけど、私聖力が小さくて長く飛べなくて…高いところにはあまり行かなかったの……だから怖くて……」


高く飛ぶときは決まってラバルの背に乗っていたときで。

自ら高いところまで飛んで行ったことはなかった。

目を閉じていて分からないけど、今はきっととても高い場所まで来ているはず。

大きなラバルの背と違い、支えられているのは腕一本と思うと不安は拭えなかった。



震える体をラファエルに寄せていると…



フワリ……――――――

もう一方の腕が私の背を支え、頭を抱き込む。




「怖い思いをさせてすまなかったな」


耳に心地よい低音とピタリと隙間のない距離がとても安心する。

例え高いところが怖いと言えど、出会った頃の私では考えられなかった。


< 113 / 431 >

この作品をシェア

pagetop