孤高の天使
「本当にどうしたんだ?」
私の顔を覗こうとラファエルが体をずらし、離れた体と体の間にヒュッと外気が入り込む。
ラファエルの腕にだけ支えられた状態と分かった瞬間、完全に引き離されそうな距離をまた詰めた。
ギュッ……―――――
「いやっ……離さないで…お願い…」
黒衣を掴む手がカタカタと震え、小さな声で懇願する。
「高いところ…怖いの」
胸に顔を埋めながら告げたその言葉はくぐもっていて。
けれど、何も言わないラファエルに、声が届いたであろうことは目を開けなくても分かった。
きっと驚いてかける言葉もないのだろう。
黙ったラファエルに羞恥を感じながらもありのままを話し始める。
「天使なのにって思うでしょう?だけど、私聖力が小さくて長く飛べなくて…高いところにはあまり行かなかったの……だから怖くて……」
高く飛ぶときは決まってラバルの背に乗っていたときで。
自ら高いところまで飛んで行ったことはなかった。
目を閉じていて分からないけど、今はきっととても高い場所まで来ているはず。
大きなラバルの背と違い、支えられているのは腕一本と思うと不安は拭えなかった。
震える体をラファエルに寄せていると…
フワリ……――――――
もう一方の腕が私の背を支え、頭を抱き込む。
「怖い思いをさせてすまなかったな」
耳に心地よい低音とピタリと隙間のない距離がとても安心する。
例え高いところが怖いと言えど、出会った頃の私では考えられなかった。