孤高の天使
しかし―――――――
「イヴ」
少し焦ったような声とともに力強い腕に引き戻される。
私…何をしようとしたの……?
ラファエルの胸に顔を埋めながら先ほどのことを思い出して震える。
遥か遠い真っ暗な地上に吸い込まれて、自ら身を乗り出して。
あのまま落ちていたらと思うと震えが止まらない…
「やっぱり…無理です……ッ」
こうなるともう動けない。
以前、上位天使にからかわれて聖なる母樹の最天まで連れていかれた時も、結局ラバルの迎えを待った。
足がすくんで力が入らず、羽を出したとしても飛べないのだ。
今は羽すら出せない……
ギュッと黒衣を握り締め、周りの景色が目に入らないように広い胸に顔を埋める。
すると、ラファエルが落ち着かせるように私の背を撫でる。
「大丈夫だ。離さないと言っただろう?」
抱きしめられながら優しく響く低音。
目を閉じているからか、その声はスッと私の耳へ届いた。
背中を一定の間隔で叩くリズムがとても落ち着く。
そして、背中を叩いていた手が私の頭に移動する。
「落ち着いたか?」
その問いに、一瞬考えた後目を閉じたままコクンと頷く。