孤高の天使
「もう一度目を開けてご覧」
「ッ……」
優しく促すような声に頷いてしまいそうになるが、先ほどの恐怖が鮮明に思い出され、フルフルと頭を横に振った。
すると……
クイッ―――――――
ラファエルは私の髪に差し入れた手で頭ごと上を向かせる。
驚いて思わず目を開ければ、綺麗なアメジストの瞳が目に入る。
「下を見るな。俺を見ろ」
その言葉に全ての雑音が消えた―――
耳元で煩く鳴っていた心音も。
時折耳を掠める風の音も。
ただ目の前のアメジストに囚われ目が逸らせなかった。
「ラファエル様……」
「良い子だ。ほら、上を見上げて」
私が落ち着いた頃合いを見計らって頭を固定していた手を離すラファエル。
優しく囁かれた言葉のままに空を仰ぐが、そこには真っ暗な雲に覆われた空だけ。
「………?」
ラファエル様は私に何を見せたいのだろう。
そんな疑問が頭に浮かんでいると…
スッとラファエルの手が空にかざされる。
そしてかざした手をそのまま横に滑らせれば、空に変化が現れた。
空を覆う厚い雲がラファエルの手の動きに合わせて動き、あっという間に払われる。