孤高の天使
「お判りでしょう?貴方の大切なイヴの命は私の手中にあります」
ラファエルが抵抗しないことをいいことに、頬に差し入れられる手。
鮮やかなガーネットの瞳が熱を孕み、ラファエルを見つめる。
「あの子の命を助けたいのでしたら私を選んで下さい」
余りにも無茶な条件にラファエルは無言で自分の頬にあてられた手を取って離す。
「無理だと言ったら?」
「貴方の愛するイヴは冥界へ旅立たれます」
深い溜息が零れる音。
それが誰のものかなど分かりきっていて…
「お前と話していても埒が明かないようだな」
冷ややかな目で見下ろすラファエルは苛立ちを込めて話す。
「イヴはどこだ。吐かないのなら吐かせるまでだが…」
そう言ってラファエルが手をかざそうとする。
しかし、近づいてくる手に危険を察知したアメリアはバッとラファエルから離れた。
「そうはいきませんわ。無理やり居場所を探ろうとするならイヴを冥界へ送ります」
「そうか…イヴは闇の滝か」
独り言のように呟いたラファエルの言葉にハッと息を飲んで驚くアメリア。
ラファエルはそれを逃しはしなかった。
「どうやら本当だったようだな」
「鎌をかけたんですのね…」
フッと笑ったラファエルに紅い唇が悔しそうに歪む。