孤高の天使



眼下の闇を見てブルッと震える。

底が見えない真っ暗な闇がぽっかりと口を開いて待っている。

落ちたら最後、戻っては来られない。



ラファエル様にももう会えない…

ギュッと目をつむり、自分の最期をじっと待っていると…





「イヴ」


ラファエルの声が耳に届く。

恐る恐る目を開くと、鏡の向こうのラファエルが微笑んでいた。




「ラファエルさま…」


届かないことは分かっていたけれど、ポツリと口にした名。

私が何と言ったか分かったのだろう、ラファエルは私を安心させるように微笑む。

その笑顔が温かくて、心にしみて…喉の奥を詰まらせながら涙を流した。



最期を覚悟していたのに…

そんな顔をして呼ばないで。

助かりたいと願ってしまう。

また貴方のもとへ帰りたくなってしまう。





「俺の声は聞こえているか?」


確かめるようにそう聞くラファエルにコクンと頷いた。







「必ず助けてやる。俺を信じろ」





「ラファ…ル…さまっ…」


ただまっすぐと私に向けられた瞳に声を詰まらせて応える。

それはまるで助けてほしいと言っているようなもので…





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