孤高の天使
それまで沈んでいた心が少し軽くなった気がした。
だからだろうか…ラファエルの前では言えなかった弱音が零れる。
「本当はすごく寂しくて、別れの時も“魔界にいたい”って言いたかったけど…それじゃラファエル様を困らせてしまうでしょう?」
困ったような笑みを浮かべた私に、ルーカスはどういう反応をしてよいのか分からない様子。
気を使ってくれていることが伝わってきて、思わず微笑む。
「そんな顔しないで。だって、私はまたラファエル様のもとへ帰ると約束したから」
あの約束があるから別れも耐えられた。
「こんな気持ちが芽生えるなんて、魔界に来た時の私が知ったらびっくりね」
「そうだな、あの頃は悪魔の俺たちを怖がっていたからな」
私につられる様にしてルーカスも笑う。
魔界に来たばかりは悪魔の存在に怯え、右も左もわからない土地に不安に駆られることもあった。
だけど、思えば初めからラファエル様は優しくて、どこか懐かしくて…
この気持ちは私の奥底で眠っていたものかもしれないと思えるくらい懐かしい気持ちだった。
「絶対帰って来いよ」
まさかルーカスに帰って来いと言われるとは思っていなかっただけに驚く。
けれど、とても嬉しくて満面の笑みで頷いた。
ルーカスにやっと受け入れてもらった瞬間だった。