孤高の天使
そして、私を拘束している黒い靄が集まり実体を現す。
指先からゆっくりと…
その手はとても白くて、血色がない。
纏う衣服はやはり黒で、次に現れたのは黒い四枚羽根と長い髪の毛。
そして最後にその者の顔が露わになった瞬間、私たちは息を飲んだ。
血を思わせる様なワインレッドの瞳、口元に湛えた不敵な笑み。
それは……――――
「アザエル様…?」
ポツリと呟いた言葉にアザエルの笑みが深くなる。
「またお目にかかれて光栄です、イヴ様」
言葉とは裏腹に拘束は一向に解かれない。
「アザエル様なぜこんなところに?警護は俺だけのはずですが」
ルーカスは警戒を示しながら冷静に口にした。
「貴方が天界へ帰ると風のうわさで聞きましてね。こうして追いかけてきたのです」
スッと冷たい指先が頬をなぞり、ゾクッと身震いを起こす。
「イヴに触るな!」
「煩いですね。少し黙っていなさい」
ルーカスの叫び声に不機嫌そうに眉を顰めたアザエルが手をかざせば、檻に電流のようなものが走る。