孤高の天使
「ぐあぁぁッ!」
「ルーカスッ!」
格子を掴んだまま天を仰ぎ、苦しそうに叫ぶ姿は見ていられなかった。
このままではルーカスが死んでしまう!
「アザエル様やめてください!」
何の感情もなく冷たい瞳でルーカスを苦しめるアザエル。
私の悲痛な声を聞き届けてくれたのか、かざした手を下ろす。
ガクッ…と膝をつき、檻の中で倒れこむルーカス。
アザエルは不気味なくらい綺麗な笑みを浮かべて口を開いた。
「殺しはしませんよ。まだ利用価値はありますから」
「利用…価値……?」
笑みを湛えて告げられた言葉は恐怖を抱くには十分で…
言葉の意味は分からなかったが、ルーカス自身の利用価値がなくなれば簡単にも殺すと言っているような口ぶりだった。
「ふざけるな…魔王様の側近だからといって…許されると思っているのか…」
息を荒げ、歯を食いしばりながら、アザエルを睨みつけるルーカス。
それが気に入らなかったのか、アザエルの顔からスッと笑みが消えた。
「お前の目的は何だ…」
「魔王の犬が…貴方は時が来るまでその小さな檻で眠っていなさい」
煩わしいモノを払うように手を動かせば、ピンと張っていた糸が切れる様にルーカスの体が倒れた。
「ルーカスッ!」
ドスンと鈍い音を立てて意識を無くしたルーカスに向かって叫ぶ。
しかし、ルーカスはピクリとも動かなかった。