孤高の天使
「アザエル様…どうしてこんなこと……」
「貴方と静かに話がしたかったからですよ」
たった…それだけの理由で?
それだけの理由でこんな酷い事が出来るなんて。
笑顔の下に隠された非情と冷酷に身がすくむほどの恐怖が湧き起こる。
ゴクリと喉を鳴らし、緊張と恐怖の入り混じった表情でアザエルを見上げれば、「そんなに睨まないでください」とわざとらしく肩をすくませた。
「全く、魔王は最後の最後まで貴方を手離そうとはしませんでしたか…」
「どういう意味ですか?」
もっと早く事が進むと思っていましたが…と呟いたアザエルに問いかける。
「そのままの意味ですよ。あれだけ魔王の傍にいたら、てっきりすぐに聖力が尽きてしまうかと思っていました」
淡々と告げられる言葉はいかにも残念だと言わんばかりの口ぶりだ。
「魔界の空気は天使の貴方にとって毒だったはずだったはずですし、ここまで粘られるとは予想外でした」
だが…と続けて口を開くアザエル。
「それも偏にその指輪と貴方自身の潜在的な聖力のおかげでしょう。聖力を封じた状態とは言え4枚羽を有する天使なのですから」
「何故私が聖力を封じられていると?」
私はアザエルの言葉を聞き逃さなかった。
聖力が封じられているなど、私ですら知らないのに。
訝しげな視線で問えば、アザエルはわざとらしくおどけて見せた。
「おっと…私とした事が、つい口を滑らせてしまいました」
嘘か本当か分からない…まるで道化師のようなアザエル。