孤高の天使
「何を企んでいるのですか?」
精いっぱいの睨みを聞かせてアザエルを見据えれば…
フッ…と笑った後――――
「世界の征服ですよ」
「ッ……!」
うっとりと狂気を含んだ声で告げられたその答えは予想もつかないものだった。
「天界と魔界、人間界…全て私の手中に収める」
まさかアザエルの胸の内にこのような野望が潜んでいたとは思わなかった。
否、思えばその片鱗はあったのかもしれない。
「何故そんなこと……」
「憎んでいるからですよ…神とこの世界を。私を否定する全てを消し去るのです」
ククッと喉の奥で笑うアザエルにゾクリと身を震わせる。
笑っているけれど冷酷で何の感情もない声。
アザエルは本気なのだと感じた。
「しかし、か弱い人間どもはいいとして、神と魔王…特にルシファーを滅するのは一苦労でしてね」
フ…とわざとらしい溜息をついたかと思えば、私の頬を冷たい指がなぞる。
「私の望みを叶える為には貴方が必要なのですよ…イヴ」
「私が…?」
「えぇ、そうです」
何故…と思う暇もなくアザエルは私の頬にあった手を額に宛がう。
そして―――――
「イヴ…私の願いの為に再び死んで下さい」
「え?」
アザエルの言葉が耳に届いた瞬間、私の視界はぐにゃりと曲がり、体が鉛のように重くなった。