孤高の天使
じゃぁあの時、私がラファエル様に記憶が消えているか確認した時、ラファエル様は記憶がありながら首を振ったの?
私を心配させないために?
「そんな…」
『イヴ…』
俯いたラファエルが呟いた声に、こぼれ落ちそうな涙を抑えて顔を上げた。
『戻ってきてくれ…』
悲痛なラファエルの声が私の胸を貫く。
私はなんて残酷なことをしたのだろう。
『例え記憶を操作されようと、君の存在を記憶から消せるわけないんだ』
ラファエル様の心に拭えぬ傷を背負わせた。
その時―――――
悲しみに暮れるラファエルの周りに変化が現れた。
今まで青々としていた空がどんよりとした灰色の厚い雲になり、木枯らしのように冷たい風が吹く。
そして、その暗闇に紛れてゆらりと動く何か。
太い幹の下で動くそれは、あの天使たちだった。
ラファエルになぎ払われた天使たちは深手を負いながらも大剣を支えに起き上がろうとしていたのだ。
その中には最初にラファエルから倒されたあの天使もいた。
しかし、悲しみに暮れるラファエルは依然として俯いたままその場から動かない。
「ラファエル様ッ!」
声が届かないと分かっていても叫んだ。
ゆらりと立ち上がった天使たちは大剣を構え直し、足音もなくラファエルに近づく。