孤高の天使
その言葉は決して大袈裟に口にされたものではなく、ラファエルにとっては本当に心臓が止まるほどの数秒だったのだ。
けれど、それは私にとっても同じだった。
向けられるはずのない刃がラファエルに向けられたとき、本当に心臓が止まるほどの恐怖が襲った。
同時に、ラファエルが目の前でイヴを喪った時の心情が手に取るように分かった。
私が自ら命を絶った時、逆の立場ならどうだったか、今の数秒で痛いくらいに理解した。
愛する人の死を前に自分が傷つくよりも深く悲しみ、後悔し、自分の無力さに絶望する。
どんなことをしても助けたくて、どんなことをしても足掻こうとする。
今でもアザエルに聖剣を突き立てた時の感触が残っていて、小刻みに手が震えている。
ラファエルを守るためとはいえ、やはりこんなことは望んでいなかった。
けれど、それすら凌駕するほどの安堵の想いがじわじわと込み上げる。
「ラファエル様…良かった……ラファエル様がいなくならなくて良かった」
わんわんと、まるで子供が天を仰いで泣き叫ぶように、私もラファエルの存在を確かめる様に強く抱きついて泣いた。
辺りに私の咽び泣く声が響く中、ガブリエル、ウリエルをはじめ、空間転移の後遺症から回復した天使たちが唖然と立ちつくしている。
「おい、どうなってるんだ一体…」
ラファエルが変な動きでもしようものなら飛び出して行こうと構えていたガブリエルはこの光景に戸惑っていた。