孤高の天使
「往生際が悪いな、アザエル。イヴを殺させはしないといっただろ」
「クッ…ラファエル……」
ラファエルの肩ごしに見えたのは先ほどまで地面に倒れていたアザエル。
アザエルの肩には人間界で拾ってきたという黒い剣が深々と突き刺さっていた。
そして、ラファエルの胸にもまた剣が深々と突き刺さっていた。
「ラファエル様ッ!」
「ッ…アザエルを捕らえなさい!」
ガブリエルやウリエルは未だ神を神だと認識していないままだったが、焦燥感に満ちた神の声に反射的に従った。
アザエルは捉えようとする天使たちに尚も剣を振り回し抵抗する。
しかし、先ほど聖剣で刺された傷が余程のものだったのか、その抵抗は無に等しく、あっけなく捕まった。
「これで終わりだ」
ラファエルは苦悶の表情を浮かべながら聖剣を抜いて、アザエルを見据える。
アザエルは拘束されたままフッと笑みを零す。
「私は何度でも戻ってくる。私が私でなくとも人という欲望の塊は私のような悪魔を生み続けるだろう」
「お前の様な奴が何人現れようと、俺の知ったことではない」
ラファエルのこの言葉にアザエルは笑みが消え、あからさまに顔を歪めるが、これにはガブリエルたち天使も良い顔はしない。
「ラファエルに何を言っても無駄ですよ、ガブリエル」
今にも反論を口にしようとするガブリエルを制した神。