孤高の天使
背筋をピンと張り、ゆっくりと開く神殿の扉を見据える。
開いた扉の向こうから溢れる光と共に現れたアザエルは髪が伸びたことと手枷をつけられていることを除けば10年前となんら変わりない。
四方を囲む天使たちがアザエルの手枷から連なる鎖を持ちながらゆっくりと歩いてくる。
神座の前までくると、天使たちは持っている鎖をそのままに、アザエルの両サイドに引いた。
アザエルの前を歩いていた天使がいなくなったことで、はっきりとその姿が目に入った。
緊張で息を飲んだ音が伝わったのか、アザエルはゆっくりと視線を持ち上げ虚ろ気なグレーの瞳が私をとらえた。
「おや、懐かしい顔がありますね」
少し驚いた表情をしたアザエルは、自分の今の状況がさも何でもない事のように口元に笑みを浮かべて私を見る。
そして、表情を硬くした私を見てすぐに気づく。
「その様子ではまだ魔王様はお目覚めになっていないのですね」
アザエルの洞察力は鋭く、その通りだったが、事実を言われたところで動揺などない。
動揺を見せればアザエルが面白がるだけだということが容易に考えられるからこそ黙っていた。
「アザエル、私語は慎みなさい。貴方に発言権を与えた覚えはありません」
横から割って入った神はアザエルを戒め、はっきりそう言った。
今日ばかりはアザエルを庇うことはせず、公平な立場で審判を進めなければならない。
罪人の審判は神の役割であり、最初こそ温情を与えようとしていた神だが、審議を重ねるうちに変わってきたそうだ。