孤高の天使
「今日貴方をこの場に呼んだのは他でもありません、貴方の処罰についてのことです」
神の硬い声が白亜の神殿に響く。
アザエルは口元に笑みを浮かべたまま視線を神に移すと、わざとらしく肩をすくめた。
「随分と時間を要しましたね。てっきり冥界送りにされるものと思っていました」
「そうですね。多くの者がそう望みました。貴方が利用した天使には家族があり、友がありました。今その者たちは大切な人を失って深く悲しんでいます。けれど貴方が罪の意識を感じていないことはこれまでの審議の積み重ねでよく分かりました」
抑揚なく告げられる神の言葉の裏には諦めにも似た失望と、突き放すような覚悟があった。
「貴方の処罰を決めるうえで私が問いたいのはひとつだけです。アザエル、貴方は自らの行いを悔いていますか?」
「まさか。私は天使として生まれ変わった時から今まで、私の行った全ての所業を後悔したことはありません」
「ではその罪に対する罰を受ける覚悟はありますか?」
神はアザエルの答えに動揺することなく淡々と問う。
「えぇ、もとよりこうなることは覚悟の上。冥界送りでもなんでも受け入れます」
対するアザエルも表情を変えることなく自らの罪を認めた。
アザエルの答えを聞いた神は「そうですか」と口にして、長い溜息を吐いた。
「私はこの数百年間、貴方を救えなかった罪悪感に苛まれ、どうしたら貴方を正しい道へ導いてあげられたかということばかりを考えてきました。そしてそれはこの先もずっと変わらないでしょう」
アザエルを真っ直ぐと見据える神の瞳は一点の曇りもないほど澄んでおり、迷いはない。