孤高の天使
「魔王様が眠りについた以上、貴方は不要。10年前のあの時のようにもったいぶったりはしませんよ?」
「死ぬのは怖いです。けれど、貴方の想い通りにはさせない。貴方を解き放ってしまうと、また誰かが悲しむから」
「私を解放するくらいなら自分が犠牲になると?」
犠牲?確かに少し前の私なら自分を犠牲にしても多くの人を守るならいいと思っていた。
愛する人を守ることが出来るなら、ちっぽけな自分の存在などどうなってもいいと。
けど今はそんな高尚な考えは持ち合わせていない。
私がいなくなると、とっても悲しむ人が少なくとも一人いるから。
だから私はその人の為に生きなければいけない。
「私は犠牲になんてなりません。貴方の様な人には屈しない」
声高らかに、笑顔で告げたその言葉に、心が洗われるような清々しさと希望が湧いた。
アザエルは一瞬驚きに目を見張ったが、すぐに目を細めて「そうですか」と呟く。
「では私に証明してみせてください」
ニヤリと笑ったアザエルは頭上に吊り上げられた右手を動かす。
親指と中指の指先を合わせたのが目に入った瞬間、ハッと息を飲む。
まさか…と思った時にはもう遅かった。
「来世で魔王様と会えると良いですね」
パチンッ―――――
アザエルが指を鳴らしたその瞬間、私の視界はぐにゃりと歪んだ。