孤高の天使
そんな馬鹿げた考えが浮かぶほどに、その存在が信じられなかった。
信じられないはずなのに…条件反射のように涙が込み上げ、溢れる。
溢れた涙は上昇に流れ、いくつもの涙の粒が雨のように空に降った。
その人の口が“イヴ”と象った時、切なさと嬉しさが込み上げ、一生懸命声を上げた。
「ラファエル様!」
声を張り上げた私にラファエルはふわりと嬉しそうに微笑み、私よりもはるかに大きい六枚羽をすぼめて風の抵抗をうまくかわしながら一気に距離を詰めた。
ラファエルは羽の消えた私の背に両手を回し、六枚羽を調整しながら落下速度を落としていく。
人間界は陽が沈み始める前で、明々とした夕焼けが広がっていた。
「ラファエル様っ…」
息を詰まらせながら呼びかけたそれに、ラファエルは微笑みながら応える。
「良かった。俺の名前を呼んでくれないかと思っていたよ」
ラファエルは片腕で私の脚の裏を支え、もう片一方の手を涙で濡れる頬に差し入れた。
温もりを感じる手に、確かにラファエルは生きているのだと分かり安堵する。
「髪が伸びたね、イヴ。益々綺麗になった」
混乱する私に対し、ラファエルは私の髪をひと房取って嬉しそうにそう言った。
普段なら赤面するその会話の内容はストンと私の心に落ちてきて、じわじわと温かくなる。
「本当にラファエル…様?」
幻のようなその存在を確かなものにしたくて、恐々と呼ぶ。
するとラファエルは困ったよう「あぁ」と言って眉を下げて笑う。
「ここにいるよ」
かけられた言葉はとても落ち着いた声でいて、込められた想いは推し量ることが出来ないくらいに詰まっている。