孤高の天使
「じゃぁ考えてみて…自我を失って闇を生み出した時、もしかしたらまた誰かを巻き込んでしまうかもしれない。その誰かには家族がいるかもしれないし、恋人がいるかもしれない。その人たちの大切な人を奪っていいの?」
ラファエルはピクリと反応し、「それは…」と口ごもる。
伏せられていた視線は私に向けられ、アメジストの瞳は迷い子のように不安気な瞳をしていた。
それを見て、私は確信した。
「今のラファエル様ならきっと抑えることが出来るはずよ」
「何を根拠に……」
「だってラファエル様は昔のラファエル様とは違うから。ラファエル様にはたくさんの仲間がいるじゃない」
まだ不安気な表情をするラファエルに私は今度こそ笑顔で答えた。
「知ってる?ラファエル様が天界に来た時、後を追ってルーカスやイリス、リリス、ルルまでもがラファエル様を追ってきたの。皆ラファエル様を慕っているから追いかけてくれたんじゃないかな」
ふと、ラファエルが知らない10年前の出来事を口にする。
「ルーカスなんて自分の身を挺してまで私をラファエル様の元に送ってくれたの」
ラファエルは自らの耳を疑ったように目を見開き、驚いている。
ただ自らの復讐のためだけになった魔王を助けようとする者が在ろうとは思ってもみなかったという表情だ。
けれど、そこに嫌悪などなく、ただ純粋に驚いているだけ。
それを見てあぁやっぱり、とふと浮かんだ予感が確信へと変わった。
「孤高の天使と言われたころのラファエル様はもういない。ラファエル様はもうとっくに独りぼっちなんかじゃないんだよ」
ラファエル様もかけがえのない存在がいつの間にか増えていたことに気づいている。
そうでなければそんなに驚いた顔はしない。
魔王に堕ちたラファエルにとってルーカスやイリス、リリスは偏見や好奇なく、ありのままの自分を慕ってくれた存在だ。