孤高の天使
「大丈夫、ラファエル様は大切な人たちがいる世界を壊したりしないわ」
笑顔で伝えたその言葉にラファエルは瞠目し、私につられるように小さく笑みを零した。
「その自信はどこからくるんだ」
そう言って吹っ切れたように笑うラファエルに私は安堵した。
「私には分かるの。ラファエル様はもう大丈夫だって。それに私がラファエル様より早く逝くことはないから安心して」
「それはどういうこと?」
「私は再天したでしょう?だからラファエル様よりは長く生きると思う」
一度死に、再び天使となって生まれ変わった私は長い寿命が約束されている。
しかしラファエルは堕天しており、私の様には再天できないため、私よりは残された時間は短い。
だからラファエルが私の死を見届ける可能性は低いと言える。
「それもそれで嫌だな。俺が先に逝って、イヴが他の誰かにとられるのは面白くない」
「私がラファエル様以外の人を好きになると思うの?」
「可能性がなくはないだろ」
私から視線を外したラファエルは小さな声でそう言った。
「大体昔から俺に関わっていいことなどなかったはずだ。一緒にいるせいで無駄な争いごとに巻き込まれ、時に傷ついて。それでも笑って傍にいてくれた君を手離せなかったのは俺だ」
自嘲的に笑うラファエルの瞳は哀愁を帯びていた。
「天界で漆黒の羽を持った天使だと疎まれ遠ざけられていた俺に比べ、君は最も純粋と謳われた天使。君に近づきたいという天使たちを遠ざけ、君の眼が彼らを追わないようにしていた」
昔を思い出しながら私は黙ってラファエルの話を聞く。
ここで想いを吐き出させなければ、ラファエルが抱えている孤独は一生消えないと思ったから。