孤高の天使
思えば私が天界から魔界に堕ちた時、ラファエルは記憶がなかった私に拒絶されたにもかかわらず、それでも私を愛してくれた。
貴方が私に不変の愛をくれたように、私もまた同じ想いで貴方を愛す。
けれど、私たちが穏やかに暮らすには天界と魔界を騒がせ過ぎた。
ラファエルの闇によって飲み込まれた土地は未だ修復できておらず、天使たちの記憶に魔王としてのラファエルが強く植え付けられている今は天界には戻れない。
かと言って、魔界で暮らすには私の聖力が足りず、前回の二の舞になることは必至。
私たちが静かに心を休める場所はあるのだろうかと考えを巡らせていた時、ふと思いついた。
「ねぇラファエル様、ここで一緒に暮らしましょう」
「ここって…人間界に?」
体を離し、驚いた表情をするラファエルにひとつ頷く。
ラファエルの目元は赤く色づいているものの、その頬にはもう涙は流れていなかった。
「天使になった魔王と聖力のなくなった天使が暮らすにはちょうどいいと思わない?」
そう言って眼下の人間界を望む。
人間界は陽が沈む前で、赤い夕陽が緑色の大地を照らしていた。
居場所がなければ新たな土地で私たちだけの居場所をつくればいい。
人間界なら誰にも邪魔されることなく二人で静かに暮らすことができる。
「会えなかった日々を埋めるくらい一緒に…ラファエル様がまた昔みたいに笑える日が来るまでずっと一緒にいるから」
私が魔界に堕ちてから今まで、ラファエルの笑顔は悲しそうな笑顔と困ったような笑顔だけだった。
過去の記憶の中のラファエルはそんな笑顔じゃなかった。
そうなった原因は私にあるのは十分分かっている。
だからこそ、私はラファエルの傍にいて、昔のように心の底から笑ってほしいと願うのだ。
真摯にラファエルを見つめていると、ラファエルはフッと笑みを零した。