孤高の天使


「イヴには本当に敵わないな。そうやって俺の心をいとも簡単に攫って行く。昔からそうだった。君はいつもまっすぐで心優しくて、温かい。こんな優しい君だから、孤高の天使と呼ばれ遠ざけられていた俺を気にかけてくれたんだろうな」

はにかんだように笑いながらラファエルは私の涙を拭っていく。



「君が俺の目の前で消えてから、再び記憶を無くして俺の前に現れた時まで、俺は復讐心だけで生きている死人同然の悪魔だった。けど今はそれでも生きていて良かったと思う。全てはこの瞬間のために生きてきた」


数百年もの間凍り付いていたラファエルの心が今溶けていく。

それはまるで冬の雪解けから顔を覗かせる花の蕾のように、強く、温かかった。





「俺が人間として生を受け、死に、天使として生まれ変わり、堕天して魔王に堕ち、再び天使として生まれ変わったのは全部君に会うためだ、イヴ」


ラファエルは私の左手を取って銀色の指輪に口づけを落とす。





「けれど、君が在るべきは天界であって、聖力を神に渡したのなら尚更天界で暮らした方がいい」


この期に及んでも自分の気持ちを押し殺すラファエルにむっと口を尖らせて、ラファエルの頬を包んでいた手を引き寄せる。

そして、目を見開くラファエルの唇に触れるだけの口づけをした。

唇を離すと、アメジストの瞳を丸くして唖然とするラファエルにクスクスと笑みが零れる。

たまには私が有利に立つのも悪くないなどと思いながら、今までになく幸せな気持ちで笑う。




「私はラファエル様と一緒がいいの」

「っ……ありがとう…イヴ。生ある限り、君を大切にするよ」


ラファエルは息を飲んだ後、また涙ぐみながらそう言った。

そして、ラファエルは笑った。

それは困ったような笑みでもなく、悲しそうな笑みでもない。

昔のように心から笑顔を見せるラファエルの表情があった。

まだその笑顔は不器用でぎこちないけど、私は嬉しくて涙が込み上げる。





「愛してる」


ラファエルが囁いた言葉に泣き笑いで応えながら、広い胸に飛び込んだ。





「私も愛してる」




固く抱き合った空の下、人間界を照らす緋色の夕陽が私たちを歓迎するように温かく包んでくれた。






END

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