孤高の天使
「この指輪のおかげでそれほど……ありがとうございました。」
と言っても闇が濃かったのはここだけで、城下はあまり辛くはなかったのだけど。
そう思いながらもラファエルに返すために指輪に手をかければ…
「返さなくていい。それは君のものだ。」
指輪に添えられた手にそっと手をあて、そう言ったラファエルに戸惑う。
「でも…この指輪は大切なものじゃ……」
胸に下げて肌身離さず持っていたこれは、きっと…
“イヴ”の指輪――――
私が持っておくわけにはいかない。
そう思って指輪を返そうとするも、ラファエルが手を包んでいるため、叶わない。
そればかりか、ラファエルはギュッと私の手を包み…
「いいんだ。君に持っていてもらいたい。」
でも…と反論しようとした私の目の前にサッとラファエルの手がかざされる。
制止の意味を込めたその手に押し黙る。
「さぁ…もう寝るんだ。」
ドクンッ…――――――
なに…これ……
甘く、誘われるように紡がれた言葉は私の身体から力を奪う。
「疲れていないと感じていても、身体は魔界の外気に触れて疲れている。」
ふらふらと体を揺らし始めた私を引き寄せ、耳元で囁くラファエル。
その声で疲れを感じていなかったはずの体は急に鉛のように重くなり、心地よい睡眠を誘う。
「だいじょ…ぶ……ま…だ……」
途切れ途切れの言葉で訴えるが、もう限界だった。
迫りくる睡魔に勝てずフツリとそこで記憶は途絶え、深い闇に堕ちた。
「良い子だ、イヴ。君は何も思い出さなくていい。そのままで……」
耳元で囁くラファエルの言葉を聞きながら―――