孤高の天使
城下町へ行った日から数日が経った。
はぁ…とため息をつけば、双子が顔を見合わせ心配そうな顔をする。
そして、それぞれ私の髪を梳く手とクローゼットをあさっていた手が止まる。
今はちょうど侍女の部屋で着せ替え人形をさせられているところだった。
「「イヴ様…」」
イリスとリリスの声が見事に重なる。
「城下から帰ってきた時からずっと溜息ばかりついて…やっぱり何かあったんですか?」
「ルーカスの様子もおかしいし。」
各々の手を止めて、椅子に座る私の目の前にちょこんと座る双子。
正座をして前かがみになり、セピア色の瞳が心配そうに私を見上げる。
「ちょっと…ね。」
そう言って力なく笑う。
さすがにこの状況で何もなかった…とは言えなかった。
あれ以来、ルーカスは全く私の前に姿を現さないし…
私もずっと考え事ばかりしていて、ぼーっとしていることも多々ある。
「イヴ様が元気がないと、ルシファー様まで元気がないんです。」
「ラファエル様が…?」
軽く目を瞬かせれば、にっこりと笑い「はい」と嬉しそうに頷く双子。
そして双子はゆっくりと昔話を始めた。
「ルシファー様はイヴ様が来るまでニコリともしないお方でした。それが、イヴ様がこの城に来た頃から柔らかい笑顔を見せて…」
「私たち本当にびっくりしたんですよ?」
そう言った双子も柔らかく笑った。