有明先生と瑞穂さん
チャイムが鳴って廊下からは人の気配が消え、六限目が始まったことを知る。

ベッドにもぐったままの瑞穂に保険医が声を掛けた。


「瑞穂さん大丈夫?まだご飯食べてないでしょう?
食べられるなら食べた方がいいわ」

「ありがとうございます・・・。でもまだ喉を通りそうになくて」

「無理はしないで。
じゃあ私少しだけ職員室に行ってくるから、一人で寝ていられる?」

「はい、大丈夫です」


一人は少しだけ心細いが、授業中なら生徒はいない。

保健室のドアが閉まるのを確認すると、閉め切ったカーテンの中で瑞穂は目を閉じた。









***


「有明先生、口之津先生を知りませんか?」

「いいえ・・・。確か今の時間は授業はなかったはずですが・・・」

「ですよねえ。いや参った。
仕事を頼もうと思ってたんですがねえ。
またどこかでサボってるんでしょうか」

「僕、資料室に用があるので探してみますよ」

「どうもすみません。
同じ若い先生なのにどうしてこう違うのか・・・はあ・・・」


有明に話しかけた年配の教師は頭を掻きながら自分の席へと戻って行く。


有明も必要な資料を持って職員室を出た。




静かな誰もいない廊下に出ると、丁度保険医がもうひとつの入り口から職員室へ入っていくのを見かけた。


(今なら少しだけ瑞穂さんの様子を見られるかもしれない)


どうせ資料室の通り道だ。
誰か他にいそうなら、前を通りすぎればいい――。







***



チッチッチッチッ



――保健室。


瑞穂はじっとベッドで横になっていた。

目を閉じても眠れない。
まだ心臓が早く打つ。
時計の音だけが聞こえる。
それでも目を閉じていると、

ガララ・・・

とゆっくりと保健室の扉が開いた。
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