有明先生と瑞穂さん




恨めしそうに睨みつける細い目。
言葉を発することなくゆっくりと瑞穂に近づいた。


「・・・・・・っ!!」

瑞穂は思わず布団を盾にするが、そんなものは意味がない。

「なんで・・・?!どうしてそこまで私を恨むのよ!!
そんなに好きなら直接言えばいいじゃない・・・!」

「うるさい!!」


必死に搾り出した声は耳をつんざくような金切り声で制される。


「何もかも運がよかったアンタにはわからないのよ!
好きでも好きでも・・・何にも接点がなかったら意味がないじゃない!」

「そ、そんなの・・・」


確かに――


そうかもしれない。

有明が自分を見つけたことも、全ては同じマンションという偶然だ。

どんなに相性のいい二人でも、『偶然』や『運命』と呼ばれる出会いがなければ何も起こらない。

だけど――


「そんなにきっかけが欲しいのなら自分で作ればいいじゃない!
同じ学校なんだから、自分から話しかければいいでしょ?!
どうしてこういうことはできるのに、たったそれだけのことが・・・」

「たったそれだけですって?!」


瑞穂の肩がビクリと震える。

――しまった。


今の言葉は、失言だ――。



「アナタができることを全ての人間ができるなんて思わないで!!」


その女子は瑞穂を突き飛ばし、右手に握る何かを瑞穂に向かって思いっきり振り上げた。


押された勢いのままベッドに突っ伏した瑞穂は目を開けた一瞬、振り上げた手にキラリと光る何かが見える。

(ヤバイ・・・!)

とっさに起き上がることもできない。



「アンタなんかっ・・・・・・!」


憎しみと、悲しみと


それらの言葉を飲み込んで、その手は瑞穂に振り下ろされた。
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