有明先生と瑞穂さん
その顔はいかにも「面倒なことになった」という顔をしている。


「君達には詳しく話を聞かなければいけない。
どういうことだか話してくれるかね?」


教頭の言葉に保健医が静止した。

「待ってください。まだ瑞穂さんもこんな状態です。
もっと落ち着いてからでも・・・」

「それじゃあ駄目なんだよ。
校長先生にも他の生徒達にもこの話は耳に入っている。
早めにはっきりさせておかなければならない。
・・・話によれば例の噂の件と関係があるそうだからね」


教頭の言葉に全員が押し黙った。


「生徒が少なくなる放課後がいいだろう。関係者は会議室に来なさい」


そう言い残して教頭は、不機嫌な顔のまま保健室を出て行った。

有明はそっと瑞穂に目をやるが、瑞穂は俯いたままだ。







有明は会議の前に一度話をしておきたかったが瑞穂にそんな余裕はないし、何よりそんな暇なんて全くなかった。

今声を掛けることすらためらわれる状態。

精神的に病んでしまった瑞穂が話してしまう可能性すらある――。


(いや・・・俺はいい。万が一に辞めさせられても、それでもいいんだ)



瑞穂のそばにいたいのは自分なのに、そこには口之津がいる。
授業が終わり生徒達が部活や帰宅しだすと、保健室にバタバタとせわしない足音が向かってきた。

足音は勢いよく扉を上げると保健室だというのに声を大きくして言った。


「晴子大丈夫?!何があったの?!」

「晴ちゃーん!!心配したよーぉ!」

「瑞穂ぉぉぉぉおおお!!!!」


駆けつけた有馬・深江・布津に保健医が「静かに」と注意する。

顔を上げた瑞穂は三人を見るとその目に少しだけ光を戻した。



瑞穂の変わりに口之津が事情を説明すると三人は青ざめて言葉を失う。


布津だけが一度、有明を睨みつけた。
< 1,196 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop