剣舞
オリビアは、ゆっくりと振り返る。


声の主は、その澄んだ瞳に、慈しみをこめて、彼女をみていた。


「ヴァイス・・・」

彼女の唇が、その名を零した。

男はにっこり笑み、彼女に歩み寄り、防壁にもたれ空を仰いだ。

ブロンズの髪が、風を含む。

「どうするか・・・
きめたの?」

オリビアも、同じ空を仰ぎ問う。

彼は、目を伏せて言葉を紡ぐ。

「毎日、修羅場だ。
アンジェラは折れないし、私は怒りが頂点にきてしまうし・・・。」

そういって、語尾を濁す。

「何か言ったの?」

「ああ。人民の命を危険にさらすような行事などやめてしまえといった。」

「逆効果だったでしょう?」

オリビアが苦笑する。

「全く君のいうとおりだ。」
そういった、彼の瞳が陰る。

彼女は、男の次の言葉を、ただ無言で見守る。


 
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