涙人
涙がこぼれ落ちていく。
あたしはそれを拭いもせず泣き続けた。
「天音…?」
突然の声に驚き振り向くと、そこには志帆が立っていた。
「志帆…? 何で?…」
「天音が病院から抜け出したって聞いて。もしかしたらなって思ってここに来たら…」
「あぁ… そっか。心配かけてごめんね」
「全然大丈夫だよ。それより…」
志帆は一旦言葉を切ると、あたしから目を逸らさずに言った。
「…記憶は…戻った?」
「……ダメ。何も思い出せない」
「そっか…」
志帆は残念そうな顔をして肩をすくめる。