春は来ないと、彼が言った。


そう言われてしまえば、鮮明にあの光景が甦る。


熱い吐息、射殺すような瞳。

迫る熱、…唇。

あのときは意味がわからなくて、ただ怖かった。


…だけど、今の恢を見たら。



「……ちょっと首のところ痛かったけど、他はなんともないよ」



びくりと恢の身体が揺れる。


そんな怯えないでよ。

あの日のわたしもきっと、恢の目にはこう映ってたんだね。
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