春は来ないと、彼が言った。
でも恢がそこにいたことが、たまらなく嬉しく感じた。
こんな光景、いつも通りのはずなのに。
「ああ。…で、なんだそれ?」
わたしに言ってるのかと勘違いしかけ、すぐに妃ちゃんに向けられた言葉だと理解した。
恢もさっきの春暁なんとかを聞いていたらしい。
上げていた顔を元の位置に戻すと、どこか拗ねた表情の妃ちゃんがいた。
ぷくっと、微妙に頬が膨らんでいる。
「…………恢くんのばか」
「…朝の仕返しだ」
「………えっと、なんの話?」
ばちばちと、見えない電光のような―――肌でビリビリと感じるものが走る。