春は来ないと、彼が言った。


「あ゛?…睦は呼び出しだよ」



どかっとわたしの隣に座り、恢はイライラした様子でパンにかぶりついた。

パンの粉がはらはらと机を汚す。


恢はきつい目付きをしたまま無言でおにぎりをずいっと差し出した。



「椛の好きな鮭だから食べろよ」



いつも少食すぎると、わたしは皆に怒られる。


お母さんの作ってくれたお弁当を毎日食べてるから、少なすぎることはないと思うんだけど…。

そんな反論が許されるわけもなく、恢はよくこうして余分にご飯を買ってきてくれる。



しかも毎回、わたしの好きなものを。



< 55 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop