Cold Phantom [後編]
ピンポンと、鳴った。
「え?」

私は思わず声をあげた。

鳴らした…では無く鳴っていた。

「ゆ…め?」

私は布団から起き上がると、現実に引き戻された事を思い知らされたかの様な気だるさを感じた。

「夢か…。」

ようやく引き戻った現実に頭が追いついてくると、2度目のフォンが鳴った。

私は重い体を持ち上げ、玄関の鍵を開けた。

そこにいたのは意外にもマリアさんだった。

「大丈夫、祥子ちゃん?」

「えっと、どうしてマリアさんが知ってるの?」

「朝方に美咲ちゃんに聞かされてね。早めに話しかけとこうと思ってたんだけど、うちもちょっとバタバタしててね。」

そう言って私の表情を伺うと少し間を空けて再び口を開けた。

「その調子だと、病院にも行ってないんじゃない?」

「病院…行きたいんだけど、高いから…。」

「高いって、時代劇の貧乏役みたいなこと言わないの。車出してあげるよ。」

「車って?」

「勿論、あの軽トラ。」

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