Cold Phantom [後編]
車なんて何年ぶりだろう…

車を買う程の蓄えが無いのは当たり前だが、何よりも免許がない。

免許をとれる歳ですらないのだから必然的に車とは無縁になる。

親がいれば変わってくるんだろうけど…

「…」

「何考えてるの?」

「えっ?」

「ぼーっとしちゃって、まぁ風邪だから仕方ないのかな。」

隣の運転席でハンドルを握るマリアさんが、運転しながら話しかけてきた。

まだアパートからはそんなに離れていないがあまり話さない私の態度が少し気になったのかもしれない。

「車に乗ったの、久しぶりだなと思ってさ…。」

「そっか、祥子ちゃんはまだ免許取れないしね。」

言いながらマリアさんは車を止める。
槍倉駅前の遮断機が降りていたからだ。

「思えば私もこの車に祥子ちゃん乗せるの久しぶりだなぁ…初めて会った時以来かな。」

「うんそうかも、て言うか多分それ以来車には乗って無いかな。」

「ふーん…」

マリアさんは意味深に頷くと遮断機が上がり車を発進させた。

「そう言えばさ、あの時祥子ちゃんに聞いてみたかった事があったんだよ。」

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