私の愛した人
「無駄な犠牲……」

空に輝く満点の星空を見上げて私は御冬さんの言葉の意味を考えた。

冷たい風が私の体を冷やした。

気が付くと辺りには雪が積もっていた。

━━そういえば圭吾に告白したのは雪の日だったな…

寒い冬の日に学校の屋上に圭吾を呼び出して告白した。

あの時のことを今でも鮮明に覚えてる。

圭吾が吸命鬼だと言われても信じることはできないし、圭吾を好きなこの気持ちもかわらない。

「無駄な犠牲……」

私はもう一度口ずさむ。

御冬さんはなにを伝えたかったんだろう?

組織に入らなければ、私は記憶を消されてもとの生活に戻る。

ほんのわずかかもしれないけど圭吾ともとの生活をおくれる。

いつ、圭吾が殺されるとも知らずに…

でも組織に入れば、ほんのわずかでも圭吾をかくまえるかもしれない。

圭吾の寿命がのびるかもしれない…

もしかして御冬さんが言ってた無駄な犠牲ってこうゆうこと…?

私はもう一度海のあった方向を見た。

目の前にはとても見慣れた学校の校庭があった。

━━私はあの学校で圭吾と出会った…

私に圭吾を救える?

できないかもしれない。不安は大きくて強い。

でもやってみなくちゃわからない。

私は重い屋上の扉を開いた。
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