smooch【BL/完結】
もうすぐ今年も終わる。
除夜の鐘も、もう100を超えただろうか。
年が変われば、あと、約2ヶ月。
それだけの日数で、
何かが変わるのだろうか。
彼が卒業してしまえば、
とりあえず教師と生徒の関係は終わる。
その後で、彼が望むものはなんだろう。
……俺の願うものは決まっているけれど。
「10、9、8……」
突然に数字を口に出す彼に、
一瞬何事かと思ったけれど、もうそんな時間か。
テレビと一緒にカウントダウンをする彼の声を聞きながら思う。
とりあえず、彼が第一希望である、
近場の大学に受かる事を祈っていよう。
それならば遠く離れる事は無い。
次の事は、それからでいい。
そうだ、先の事なんて、
蓋を開けてみなけりゃわからない。
だけど、どうかいい年でありますように。
「先生、あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
日付が変わったと同時に、
起き上がってそう言う彼に、
今年もよろしくお願いします。とまた頭を撫でてみた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
珍しい、めいっぱいの笑顔を浮かべる彼。
少なくとも1年は、よろしくさせて貰える。
言質をとれたと言ってもいいだろう。
それじゃあよろしくお願いします。色んな意味で。
そんな事を思われているとは知らずに、
にこにこ笑う彼が可愛い。
きっと、良い1年になるだろう。
【あけるまで 終】