真輔の風
あそこにいた女、吉沢百合子に何をしていたのだ。
いや、想像はつく。
信一が言ったように、
飛び降り自殺をした女の代わりにあの吉沢を。
多分そんなところだろう。
反抗出来ないように大勢で吉沢を…
だから、龍雄が飛び込んだのを幸いと、服を抱えて逃げたのだ。
そんなのは卑怯ではないか。
いや、龍雄が逃げろ、と言ったのかも知れない。
信一のように大声を出して、
大騒ぎをして人を呼べば良かったのに…
龍雄の奴…
真輔は大体の筋が分かったことで、
病院にいる龍雄の顔が浮んで来ているが、
すぐに行こうとは思わなかった。
とにかく龍雄がやられた真相を突き止めたいと思う。
だから、もう少ししたら吉沢百合子に会わなくてはと考えていた。
そう、真輔の中の優先順位はそうなっていた。
「真輔、夕飯の前に病院へ行くか。」
そんな事を考えていた真輔に栄作が声を掛けてきた。
「う、うん… その前にちょっと… 」
「龍雄はお前の大切な友達だろう。
その友達より大事なことがあるのか。」
栄作も真輔が龍雄を友達と認めていることは知っている。
真輔に出来た初めての友達。
真輔が祖父母に、友達、として紹介したのが龍雄だった。
それなのに、
今の態度は納得がいかない、と言う顔をしている栄作だ。