幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
間もなく、久坂さんたちが京都から戻ってきた。
一緒に長州藩と親密に関わって、尊皇攘夷論に荷担していた三条実美とかっていう人を含む七人の公卿も長州に落ち延びてきたらしい。

「高杉さん、今日これから京都に行きます。挨拶にきました」
「そうか、行くか。何度も言うようじゃが、早まったまねはせんように」
「わかっちょります」

久坂さんが旅仕度できてる。
けどさあ、京都に行くっつったって、長州の人は京都から締め出しくってんでしょ?
それで、こないだ戻ってきたばっかりなのに、そんな、殺されるかもわかんないような京都にまた行くわけ?なんでよ?
まだ、諦めてないのかなぁ。
「今度は、吉田も一緒じゃし」
え?吉田って、稔麿さん?
なんでー?反対!連れてかないでよっ!
「そうか。あっちには桂さんがどっかに生き延びちょるはずじゃけぇ、あの人とよう話し合って行動する事じゃ。今、京都に上ろうとしちょる者の中には京都に着いたらすぐにでも戦をしようと思うちょる者もおるらしい。じゃけど、戦をするんなら、藩の全力をあげてとりかかる覚悟じゃなけりゃあ、勝てりゃあせん。よう、考えて事を進める事じゃ」
「はい。わかっちょります。そろそろ行きます」
「おお」

ちょっとーっ!高杉さんっ!
そんな心構えなんか言って聞かせてないで、久坂さんに稔麿さん連れてかないように言ってよーっ!
「では」
あ〜、行っちゃったじゃな〜い。
んもぉ、ばか、ばかっ。
稔麿さんが、京都に行っちゃったら、会えなくなるじゃなーい!
あたしの存在気付いて貰えてなくったって、会えるだけで、この現実にいる事の気持ちの折り合いつけてたんだからぁ〜。
ばか、ばかっ。
ん?んん?
高杉さんがぼやけてきた。
ああ、だんだん暗くなってきた。
今度のワープはどこへ…。
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