幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
着いた。下関に。

ひゃー!すごい船の数っ。
前の攘夷の時と比べ物になんない。
軍艦が17隻、他に3隻。

馬を預けて、あたしたちは建物の中に入った。
「伊藤、どうなっちょるんじゃ」
「あ、高杉さん。ダメです。話し合いがつきません。敵は攻撃を開始する準備を進めちょります」
「…」
高杉さんはいつになく、難しい顔になってる。
「高杉、奇兵隊は出陣の用意は出来ちょる」
あ、この人が赤根さんだ。奇兵隊の総督だって高杉さんが言ってた。
創設者の高杉さんが初代総督なんだけど、高杉さんは堅苦しいの嫌だから、すぐ他の人にその役職譲っちゃって、今は、この赤根さんなんだよね。
「連合艦隊が攻めてきたぁーっ!」
えっ?
「敵が続々と上陸してきましたっ!」
息を切らせて、若い奇兵隊員が駆け込んできたっ。
「ついにきよったか」
「よしっ、奇兵隊出陣じゃっ!」
あ、赤根さんはもう行っちゃった。
「織田っ、ついて来いっ」
「あ、はいっ!」

もう、ここまできちゃったら、高杉さんを信じてついて行くしかないっ。
きっと、高杉さんの傍があたしにとって一番安全なとこよね。
例え、敵陣に乗り込む事になったって。

とは、言いつつ、なにー、あの外人の大群はっ。
ざっと、数千人…。
で、奇兵隊はっていうと、わずか600。
しかも、向こうはなんか、今風のライフルって感じなのに、こっちは、いかにも昔っぽい銃だし…。
勝てっこない…。

…やっぱり、勝てなかった。
ほとんど無抵抗に近い状態で、長州は、負けた。

まぁ、おかげで、あたしの初陣の出番はなくて良かったけど…。
あたしにここにいるように言って、高杉さんはあちこち駆け回ってる。

どこの砲台もすっかり包囲されちゃって。壊されちゃって。

日が暮れてきた。潮風が妙に冷たい…。
「織田」
「あ、高杉さん」
「何を考えちょる」
「長州藩は、これからどうなるんだろうって」
「これからか…。見てみぃ。夕日が綺麗じゃのう」
「ほんとだ」
「あの夕日、今は赤く燃えて沈んで行くが、明日にはまた昇ってくる。…長州も、必ず、また、昇る。心配せんでええ」
「高杉さん…」
なんだか、馬面だとばっかり思ってた、高杉さんの顔が、すごくかっこよく見えてきちゃった。
…夕日のせいかな。
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