僕の愛した生徒
その名前に僕はハッと目を見開く。
「どうして……」
思わず僕の口から零れた。
なぜ、奈菜が玲香を知っているんだ?
驚きを隠せず、ただ、奈菜を見つめるだけの僕に奈菜は話を続ける。
「秀は寝ぼけていたから覚えていないかもしれないけど、あの日…
秀が教室で私に初めてキスした日ね、秀、私のことをそう呼んだんだよ」
奈菜はそう言って小さく笑った。
「でも、私はそれでも嬉しかった。
勘違いのキスだったとしても
すごく凄く嬉しかったの。
だからね、秀に告白された時、
誰かの代わりでもいいと思った。
だけど…秀の家に初めて遊びに行った日、見ちゃった。
本の間に挟まっていた写真……
秀と一緒に幸せそうに映ってて、
“あぁ、この人がレイカさんなんだ”って思った。
私……レイカさんに似ていたんだね」
悲しそうに微笑んだ奈菜は
「全部を覚悟していたつもりだったんだけど……」
と独り言のように小声で続けた。
何一つ言葉が出ない僕。
「秀……
知っていたのに…ずっと苦しめてごめんね」
奈菜は震える声でそう言うと、
僕に小さな笑顔を作って見せた。