僕の愛した生徒


彼女の真っ赤になった耳。


僕の鼓動は大きく打ちつける。



僕は彼女の返事を催促するように回している腕に力を込めた。



「私のファーストキスだったんだよ」


弱々しい彼女の声がやけに響いた。


「ごめん…」


彼女の耳元で呟いた僕に、彼女は首を小さく左右に振った。



僕は彼女に回していた腕を解き、
彼女の肩を掴んで僕の方に向かせた。


俯いている彼女。


「藤岡?」


「…………」




僕は彼女を見つめ、

不安そうに顔を上げた彼女と視線が重なった。



「藤岡奈菜さん。
僕と付き合って下さい」


逸らされることのない視線。


僕の鼓動が静まることはない。





ふいに固まった彼女の顔は緩み

あの日と同じイタズラな笑みが広がった。



「先生、私の初めてを奪ったんだから責任とってね」




緊張から解放された僕の顔から思わず笑顔が零れる。



僕はもう一度、彼女を抱きしめ


そして

それに驚き、腕の中で僕を見上げる彼女の額にキスを落とした。


照れるような彼女の表情。



それが何だかくすぐったい。



「奈菜…好きだよ」





…玲香


愛してる…
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