僕の愛した生徒
そして、流れる景色は僕の知らない街を抜け、見慣れた風景に変わっていく。
僕は沈んでいく太陽を背にして腕時計の時間を確認し、
家に直帰せず学校に寄ることにした。
学校に到着した頃には
茜色だった空も藍色に染まり、
学校の敷地内にある駐車場の車はもうまばらになっていた。
僕は奈菜に電話する。
数回のコールの後に電話にでた奈菜の声は
『帰ってきたの?』
と弾んでいて
「今、着いたところ」
僕がそう言うと
『お帰りなさい。ゆっくり休んでね』
と僕を労る言葉をかけてくれた。
僕が奈菜と電話で話をしながら合宿所へと向かっていると
そこから漏れる光が目に入る。
「まだ、学校に居るの?」
僕は知らない振りをしてワザと聞く。
そして、僕が家に居ると思っている奈菜は
『うん。でも、もう少しで洗濯が終わるから、そしたら帰るよ』
と答えた。
僕はそれに返事をしながら静かにそこに近づく。
僕の目が、開けたままになっているドアの向こうに、
器用に片手で作業をしながらもう一方の手で携帯を耳に当てる奈菜の姿を捉えた。
「早く奈菜に会いたいな」
僕はそっとドアの前に立つが、ドアに背中を向けている奈菜は僕に気づかない。
『明日になったら会えるよね』
「僕は今すぐ会いたいんだけど」
僕は開いたままになっているドアをノックした。