僕の愛した生徒


ノックの音で振り返った奈菜は、突然の僕の出現に面食らって、ただ僕を見つめている。


そんな奈菜に


「どうした?
幽霊でも見える?」


と僕はイタズラに聞いて携帯電話を閉じた。



驚きを隠さず首を横に振る奈菜。


そんな奈菜に

「ただいま」

と僕が笑顔を作ると、奈菜の顔には目映(まばゆ)い笑顔が見る見る広がった。



そして

奈菜も携帯電話を閉じると、


「お帰りなさい」

と満面の笑みで僕に抱きついてきた。



何だかくすぐったい。


こんな風にストレートに感情表現する奈菜は可愛い。

でも…

その反面、時々、僕はどうすればいいのか戸惑ってしまう。

それに、そんな時には決まって、
何か棘のようなものが僕の胸を
“チクッ”と刺す…



僕は奈菜の肩に手を乗せそっと引き離し、苦笑いを浮かべて奈菜の頭を撫でる。

すると、奈菜は子犬のような顔で僕を見上げ


「先生の充電〜」


と今度は嬉しそうに僕にしがみつく。



「何んなんだ?それは」


「だって、先生に5日間会えなかったんだもん。
先生を充電するの」



屈託ない奈菜を見たら、僕はもう奈菜を引き離す事なんて出来なくなった。


「5日間だけだろ?」


「“だけ”じゃないの。
5日間“も”なの」


僕には何だかよく分からない理屈。

それを得意そうに話す奈菜だったが、僕が


「そんなもんか?」


と聞くと、奈菜は口を尖らせながら上目遣いに僕を見て


「先生は寂しく無かったの?」


と訊いた。
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