僕の愛した生徒
それでも言葉を見つけられない僕に奈菜は
何度も“大丈夫”と呟き、
僕の背中を子どもを慰めるみたいに、優しくトントンしたりさすったりした。
腕の中から伝わる奈菜の温度。
それが
ただ…温かかった。
僕はそのまま奈菜の腕の中で
甘い香りに包まれながら、
しばらくの間、奈菜を感じ
その優しさに甘えた。
「奈菜、ありがとう」
僕の言葉で奈菜は僕を見上げ、
子どもの目をして小さく微笑み
頷いた。
そして、僕に回されていた奈菜の腕には力が込められ、
「先生…好きだよ」
奈菜は呟き、
曇りの無い真っ直ぐな瞳で僕の目を見据えた。
そんな奈菜の姿に
僕の胸は大きく高鳴った。